カスタマーサクセスマネージャー職の難しさと魅力:転職前に知るべき“共感関係”の重要性
このブログの公開を決めたのは、皆さんにカスタマーサクセスマネージャー職の厳しい側面をお伝えする必要があると感じたからです。
「チャーンレート」や「カスタマーオンボーディング」は聞いたことのある方も、おられるのではないでしょうか?
念の為、ChatGPTでも質問してみました。
ChatGPTの回答では、「顧客満足度の把握」が重要だとされています。
ですが、本当にこれで良いのでしょうか?
顧客満足度を注視してきたにも関わらず、クライエントが競合他社に流れる場面を筆者は何度も目にしてきました。
こうした中で、ふと思ったのです。
カスタマーインタラクションで、距離を感じてしまうクライアントがいるのはどうしてなのか?
プロダクトやサービスに関する問題を相談できずにいるクライアントがいるのはどうしてなのか?
決まってヒアリングが延期になるクライアントがいるのは、どうしてなのか?
こうして考えるうちに、カスタマーサクセスマネージャー (CSM) 職の核心が見えてきました。
それは、「共感関係」です。
顧客との関係を一から構築し、信頼関係を育て、顧客の関心に当事者のように共感を寄せる。
こうした日々の積み重ねが、カスタマーサクセスマネージャー (CSM) 職の本来あるべき姿なのだと感じました。
今回のブログでは、顧客との「共感関係の構築」、「共感関係の促進」にフォーカスしてお届けいたします。
共感関係の構築
「コミュニケーションにおける最大の問題は、相手を理解しようとして話を聞いているのではないことである。私たちは相手に耳を傾けながら、自分の返答に考えを巡らせてしまう。」Stephen R. Covey氏
Covey氏のこの言葉には、「心から相手を理解せよ」というメッセージが込められています。
各カスタマーとの初回インタラクションでは、次回以降のスムーズな関係構築のために抑えておきたい必見ポイントがあります。ここから、いくつかの例をご紹介いたします。
コミュニケーションの透明性
カスタマーとは、包み隠さず情報を共有することが求められます。
現時点で詳細が掴めきれていないことがあっても、取り繕う必要はありません。
また、製品やサービスに欠点がある場合も、きちんとカスタマーに伝えましょう。
そして、カスタマーのために常に最新情報を仕入れ、目の前のカスタマーの意見を尊重する姿勢を示すことが大切です。
公私のバランス
プロとしての仕事モードと個人としてのあなたの個性を上手く取り合わせることが重要です。
その場の雰囲気はどうですか?クライアントの様子はどうでしょうか?こうして、相手を見据えた上で、あなたらしいユーモアや個性をカスタマーインタラクションに取り込んでいきましょう。
クライアントとのヒアリングとはいえ、人と人との交流です。クリエイティブな発想や知的好奇心を刺激する場として昇華していきましょう。目標は、各クライアントが心待ちにしてくれる場や関係性を作り上げていくことです。
専門性の発揮
クライアントから相談の連絡が入ったら、まずは基礎事項の再確認です。業界トレンドや最新情報、前回のヒアリング時からの変更事項はありませんか?
知らないことを認めることができる素直さや潔さは大切です。しかし、常に情報のアップデートやキャッチアップに取り組む姿勢を忘れないでくださいね。
傾聴力
アクティブリスニング(積極的傾聴)は、共感関係を構築する上での必須スキルです。
ただただ顧客の発言を聞くだけには止まりません。注目すべきは、言葉に込められた本当のメッセージです。
目の前のカスタマーにしっかりと耳を傾け、適宜聞き返しながら、確認をとりましょう。また、フォローアップクエスチョンを意識すると、顧客の状況に対するさらなる理解が深まるだけでなく、顧客の真意を大切にしたいというあなたの姿勢に気づいてもらうことができます。
こうした深いレベルで顧客に向き合っていく姿勢があなたと顧客の強い信頼関係を築き、ビジネスパートナーとしての成功に向けた基盤になっていくことでしょう。
カスタマーの意図や目標に沿った意思疎通
カスタマーとの共感関係では、単に感情を察すればいいというものではありません。カスタマーの目標や目的をプロとしてサポートすることが求められます。
時には、顧客の個別目標に合わせたカスタムアプローチの提案が求められます。
こうした一人一人の顧客に向き合う側面からも、本職が単に製品やサービスの販売提供だけではないことがお分かりいただけるかと思います。むしろ、カスタマーサクセスの真の業務は、スタート段階から長期的な成功に至る、カスタマージャーニー全体を包括的にサポートしていくことです。
共感関係の構築には時間がかかるものです。カスタマーの声に向き合い、各顧客との会話内容を心に留め、顧客が製品の価値を見出せると感じたときには共に喜びましょう。
共感関係が構築できた後の段階では、培われた関係性の維持・体現にフォーカスすることになります。皆さんの中にも、ここで苦戦されている方がおられるのではないでしょうか?
共感関係の促進
共感関係を体現していくには、約束を守り、顧客のスケジュールを尊重し、コミュニケーションの透明性を意識する必要があります。
相手のスケジュールに心を配る
複数業務を並行処理するときに、時間管理スキルが試されていると感じることはありませんか?
このような状況では、業務の優先順位を明確化し、それぞれの喫緊性や重要度合いを正しく見定める必要があります。
業務の優先順位づけに筆者が実際に愛用している方法は、「アイゼンハワー・マトリクス」です。
まだの方がおられましたら、是非一度、お試しください。オススメですよ。
相手に真摯に向き合う
内容によっては、約束で気が重くなることもありますよね。「こうする」と先に宣言してしまっているのですから、責任を感じるのはもっともなことです。
顧客にフィードバック内容を踏まえた仕様変更やパイプラインの新機能実装を約束したのなら、実行に移りましょう。
もし遅延が見込まれる場合には、正直に伝えましょう。また、その際は、進捗状況、課題点、そして具体的な成果も忘れずに共有してくださいね。
定期的な連絡を忘れない
顧客がいつでもあなたに相談できる環境作りに徹してください。それぞれの顧客が普段使用するコミュニケーションツールを取り入れ、積極的に活用していきましょう。
たとえ即時対応が難しくとも、業務として許容範囲内の時間で対応できることが、顧客との関係における共感関係の基礎となります。
相手に合わせたテーラードソリューションの策定
共感力があれば、顧客ごとのニーズや目標に最適化されたテーラードソリューションを提案できるようになります。
顧客の抱える具体的な課題や希望を理解することができれば、顧客が本当に達成したい目標にあったカスタムオファーを創り上げることができますよ。
EQ(心の知能指数)
EQ(心の知能指数)は、共感力を育む鍵です。
顧客側だけでなく、自身の状況も把握・理解することが求められます。意識的なセルフマネージメントができるようになると、顧客に共感力を示しながらプロフェッショナルな観点に基づくサポートができるようになります。
チームコラボレーションによる確信的なソリューションの提案
共感関係構築の範囲は顧客だけではなく、社内の他部署間連携にも広がっていきます。
営業部、プロダクト開発部、サポート部やその他の部署と綿密な連携を重ねることで、社全体で顧客のニーズや目標に沿った運営ができているかを確認することができます。
こうしたチームコラボレーションを取り入れることで、連携のとれたカスタマーエクスペリエンスの提供が可能になるのです。また、連携や顧客との共感関係を大切にしながら、社として一つの目標に向かっていく社内環境が実現できるでしょう。
共感関係の体現
一貫した共感関係の体現
共感関係を維持していくには、定期的な接点を持ち、絶えず関係性を維持する努力を惜しまないことがポイントです。
定期的な顧客接点(タッチポイント)の設定
顧客からのイレギュラー相談の後でも、積極的に接点を設けるようにしましょう。
どの製品機能が業務プロセスに役立っているかを簡単にヒアリングしたり、時期によっては、年末年始の挨拶や暑中見舞いを送ってみるのも効果的です。
関係構築
カスタマーとの関係構築も一般的なラポール(信頼関係)構築と同じです。相手への興味関心があってこそ成り立ちます。
カフェなどのリラックスした環境でヒアリングをしたり、オンラインチャットの機会を設けるのがオススメです。
プロダクトのアップデート情報についての話し合いはマストですが、さらに踏み込んで、各カスタマーの個人的なエピソードに触れたり、プロとしてマーケット動向に関する洞察が共有できると相互の信頼関係がいっそう深まるでしょう。
顧客と真摯に向き合う誠実さ
製品購入や契約の話に傾くことがあるという点では、カスタマーサクセスマネジメント職も他のサービス業務と似ているところがあります。
しかし、個人的には、顧客との間で、主たる議題が共有・相談できていれば、常に製品アップデート情報の紹介やソリューション提案といったビジネスライクな側面に縛られる必要はないと考えています。
以前聞いた顧客の休暇旅行や、クライアント側で検討している新たな戦略プランについて話を聞くことも共感関係の構築・維持には欠かせないワンシーンです。
単なるビジネスライクなお付き合いではなく、共感関係と誠実性に根ざした人と人とのつながりに昇華していくのがベストだと筆者は実感しています。
折衝スキル
ビジネス場面において、衝突や誤解は避けて通ることができません。しかし共感関係が構築できていれば、こうした難局も相手への思いやりや相互理解に基づいて建設的に取り組むことが可能です。
ポイントは、顧客側の感情やニーズを把握し、一貫して解決策を見つける姿勢を示すことです。こうすることで、顧客からの信頼を損ねることなく、衝突を解消しながら、関係性を強化することができますよ。
公私の線引き
共感力は本職の欠かせない要素ですが、プロとしての自覚との兼ね合いを忘れないでください。
顧客と過度に接触したり、付き合いがプライベートになりすぎるのも、プロとしてはオススメできません。
あくまで、顧客と自社の双方に対する守秘義務や真摯な対応が本職の根幹にあることを忘れないでください。プロとしての線引きは、今後も意識してくださいね。
変化への適応力
ビジネスモデルは進化の一途を辿り、顧客のニーズや目標も時間とともに変化を続けていきます。顧客との間で一貫した共感関係を維持するには、こうした変化への適応力が問われます。
変化する顧客のニーズに絶えず関心や理解を示し、柔軟な対応を心がけてください。業界動向や市場動向に左右されない揺るぎないサポートを続けてくれる担当者だと、顧客に信頼してもらうことができます。
自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)との適合性
カスタマーサクセスマネージャーとしての共感関係も、自社のMVVや社内文化とかけ離れていては困ります。
顧客対応においては、カスタマーエクスペリエンスに携わる全ての部署で一貫した共感関係を構築・維持できるかが成功の鍵となります。営業部、サポート部からプロダクト開発部、マーケティング部に至る部署を超えた連携・共感関係の構築が重要です。
今回のブログでは、筆者が実際の業務から得た気付きをご共有させていただきました。ブログをご覧いただいた皆さんのお役に立てれば幸いです。
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