「すべての人を投資家に」トラノテック株式会社 代表取締役社長 ジャスティン・バロック氏との対談(後編)
「自身の経験不足とリスク回避の理由から、私は投資を常に敬遠してきました。ギャンブルの存在に近いものからどのようにして利益を生み出すことができるのでしょうか?」
トラノテック株式会社の代表取締役社長であるジャスティン・バロック氏にはこのような懸念に対する解決策があります。セブン銀行・Nanaco・みずほ銀行・楽天銀行などとサービスを提携している同社の代表的な資産形成サービスアプリ「トラノコ」を通じて、彼は人々の投資に対する苦手意識を取り除くことを目指しています。
トラノコの提供する解決策と、それが日本の投資家への教育にどのように役立つのかを知るため、バロック氏に話を伺いました。前編では、会社の成り立ちや日本での投資について話し、「トラノコ」について深く掘り下げていきました。後編では、投資未経験者へのサポートやトラノコ以外の新サービス、会社の社風、新型コロナウイルスの影響について話しました。
Wahl+Caseのブログをご覧いただいた方限定に2000円分の投資資金のプレゼントも用意してます。
年齢制限はありますか?
トラノコは15歳から口座開設が可能です。投資に踏み出す機会を持ってもらうためにも、22歳までの学生には月額利用料は無料でサービスをご利用いただける「トラノコ学割」を提供しています。15歳から22歳までの学生は誰でも月額利用料無料でトラノコをご利用頂けますが、未成年の方の口座開設には保護者の同意が必要です。近年ではこの若年層のお客様が増えており、その数は全体の約5%近くにも及びます。
お金や経済について考え、投資を始めるのは早ければ早いほど良いので、この状況はとても素晴らしいことだと思っています。
また弊社では大学や学生と連携し、金融や投資についての知識を広める機会を設けています。私はこれまで長いこと金融業界でキャリアを積んできましたが、20歳の頃にトラノコのようなサービスに出会いたかったと思います。
若い方々へお伝えしたいのは、「少額からで良いので、投資を始めてみることが大事。少しずつでもコツコツ投資し結果、資産額が成長する可能性に数年後きっと驚くことでしょう。」
無理して一度に多額の投資を行うよりも、まずは市場に参加し始めることに意味があるのです。
トラノテックでは投資未経験者に対してどのようなサポートを行なっていますか?
まず、極力始めやすいよう、トラノコの新規口座開設のプロセスをできるだけ簡略化しました。次に、運用状況の報告を定期的に行い、お客様が自分の運用残高や投資状況、ファンドを構成する資産の動きを日々アプリ上で確認することができるようにしてます。
さらに、金融市場の動きや、トラノコファンドへの影響などについて、毎週ウィークリー解説を提供しています。例えば、米国政府の発表が市場に影響を与えた場合、世界の様々な市場への影響を分かりやすく説明をしています。
また、学びの要素を含むコンテンツの拡充をはじめており、金融リテラシー向上に向けた取り組みの強化を計画しています。
貯金をする文化からの脱却を促すには何が必要だと思いますか?
日本人の貯金体質を変えてもらいたいとは考えていません。貯蓄すること自体は悪いことではなく、むしろ良い習慣だと思います。ただ、投資を行うことも検討してみてはいかがでしょうか。
無論、決して貯金の全額を投資に注ぎ込む必要はありません。投資をし続けることによって徐々に資産残高を増やすことができるのです。市場には変動がつきものですが、長い目で見れば資産の成長が期待できることを歴史が物語っています。特に、日本のように金利が極めて低い市場では、資産運用をすることで、銀行預金に置いておくだけでは得られない「資産を増やす機会」が得られるのです。そのため、無理のない範囲で投資を始めることをお勧めしています。長期的に市場に参加すれば、複利効果も相まって元手以上の価値を得ることができるでしょう。お金は「投資」というプロセスを経て育てることができるものなのです。
トラノコ以外に取り扱っているサービスはありますか?
はい。2020年7月に新しいアプリ「マネーステップ」を立ち上げました。これは、1日に10,000歩以上、または1ヶ月に20万歩以上歩いた方にポイントを付与する歩数計アプリです。
マネーステップは、投資の世界と健康・フィットネスの世界を結びつけるというビジョンで提供を始めました。必要歩数を達成するとポイントが付与され、そのポイントはトラノコアプリと連携することで現金化され、投資に回すことができます。これもまた、資産形成を人びとに身近に感じてもらうための新たな方法です。
「歩くことで健康的にも経済的にも自分の将来のためになる」という感覚を持って頂きたいのです。 歩数計アプリ自体は決して新しいものではありませんが、歩けばもらえるポイントを投資資金に結びつけたのは、弊社が初めてだと思います。
今後検討している新サービスはありますか?
トラノコを中心に、新しいサービスや機能を開発しようと現在検討しています。トラノコのご利用者の資産運用経験の幅が広いことを早い段階から認識していました。お客様の65%が投資未経験者である一方、20%以上の方達が3〜5年の投資経験をお持ちです。今後、お客様の投資経験値に合わせてサービスを拡充していきたいと思っています。
当社のサービスは、初めて投資をするという新しい投資家層を広げており、そのお客様が金融リテラシーを身につけ、投資をすることに慣れ親しんでもらうことを目指しています。お客様の投資経験が増えるにつれ、自然と他の投資商品やサービスに対しても興味を持たれることでしょう。また、特定の投資家層向けにプレミアム・サービスの提供も検討しています。投資アプリで様々なタイプの資産運用商品を提供することが可能だと考えています。
社内では「トラノコ Everywhere」戦略についてよく話をします。面白くて有意義な企業提携の機会がまだまだ他にもあると信じています。今後数ヶ月で、知名度の高いパートナーやサービスとの提携の発表を予定しています。
さらには、弊社のサービスモデルを他国のウェルス・マネジメントにも提供する機会もあると考えており、東南アジアやヨーロッパ市場での事業拡大と提携についての調査も行なっています。
トラノテックの社風について教えてください。
日本でサービスを提供している事業であり、日本のお客様の期待に応える必要があることに重きを置きつつ、日本的な面とインターナショナルな面を兼ね備えた社風を築いています。弊社は外国籍のCEOにより日本で創業された企業で、経営陣・従業員共に日本人及び外国人社員で構成されています。社員の3分の2以上が日本人ですが、他にも様々な国籍の社員が在籍しており、ポートフォリオ・マネジメントからエンジニアリング、経営企画・戦略まで、幅広く活躍しています。社内コミュニケーションの大半は日本語で行われていますが、英語を使う場面ももちろんあります。
とはいえ、提供する資産運用サービスは規制業種です。ベンチャー企業らしい機敏性と雰囲気を作りたいと思う一方、金融庁の規制の下、サービス提供をしており、金融機関として適切な基準や規則、ガバナンス体制を構築しています。
では、御社は金融業界とテック業界のどちらに属するのでしょうか?
弊社のビジネスは、従来の金融サービスと、より新しいテクノロジーを用いたサービス提供を組みわせています。 その違いは、お客様にとってのサービスの入り口と、資産運用ビジネスの根幹の業務運営にあります。
トラノコアプリを見ているお客様からは直接見えないサービスを支える実務体制は、従来の金融機関と同様です。運用、業務管理、コンプライアンス、クライアント・サービスなど、様々な部署が、業界スタンダードのシステムを用い、業務に従事しています。従来の金融サービスと違う「テック」な要素は、口座開設の仕方、弊社とのやり取りやレポート取得の仕方、そしてトラノコの機能性や他のサービスとの接続性など、お客様にとっての体験にあります。その意味で、弊社のサービスはテクノロジーを駆使した金融サービスと言えます。
少なくとも資産運用サービスを提供するタイプのフィンテックは、どちらか一方に偏るのではなく、テクノロジーを通して規制に基づいたサービスを提供するという重要な均衡を保っています。とはいえ、まだまだこれからも進化し続けるでしょう。
最後になりますが、新型コロナウイルスによる影響は何かありましたか?
ここ数ヶ月、色々な形で困難な状況が続いていましたが、トラノコの新規登録者数の増加という点では良い進展がありました。在宅勤務や社会の変化に適応せざるを得ない状況下で、将来に備えて投資を始めようという意識が高まったのかもしれません。
社内の業務運営に関しては、在宅勤務で対応できることの多さに気付かされました。エンジニアリングチームは、必ずしも常にオフィスで仕事をしなければいけない業務ではないため、在宅勤務という環境へ移行できたことに一番満足しているようです。
他の業務では、日常的な作業要件や規制上の理由から最低限の人数は出社する体制が必要でした。従業員全員の完全在宅勤務は実現できませんでしたが、当初の数ヶ月でどこまでが可能か把握することができ、今後は全員が毎日オフィスにいなくても業務が進められるよう、良いバランスの取り方を学ぶことができたと思います。
最後に一言お願いします。
私たちは、誰もがご自身の将来について考えることを常にお勧めしています。先々、様々な目標を達成したり、想定外の困難を乗り越えるためには、出来る限りの準備と経済的な安定を築いておくことが重要です。弊社はトラノコを通して、お客様がどのような将来にも備えられるよう、資産形成が容易に行えるサービスをこれからも提供していきたいと考えています。
Bryan Rios
マーケティングスペシャリスト